令和5年度入学式式辞
入学生の皆さん、桜の花が咲き誇る今日、熊本大学へのご入学、誠におめでとうございます。
本日ここに、御来賓各位の御臨席を賜り、理事、副学長、部局長、教職員と共に、総勢2,541名の入学生の顔が見える入学式を執り行うことができることは、本学にとりまして大変喜ばしいことであります。また、入学を果たされた皆さんの研鑽と努力に敬意を表し、その志を支えてくださったご家族や先生方をはじめ関係する皆様に深く感謝しつつ、心よりお慶び申し上げます。
皆さんがこれから学ぼうとする熊本大学は、明治20年(1887年)に設立された第五高等中学校(五高)から数えて136年の長い歴史と素晴らしい伝統を持ちます。文学部、法学部、理学部は旧制第五高等学校、教育学部は熊本師範学校、工学部は熊本工業専門学校、薬学部は熊本薬学専門学校、医学部は熊本医科大学を母体として、昭和24年(1949年)に国立熊本大学として発足した総合大学です。
熊本大学には「五高記念館」、「化学実験場」、「工学部研究資料館」、「表門(おもてもん)」(通称:赤門)の4つの国指定重要文化財の建造物があり、なかでも明治22年(1889年)に完成した五高記念館は重厚感漂う美しい建造物で、キャンパスは日本の大学の中でも特に歴史と伝統を感じさせる「本当に大学らしい大学」と評価されています。その第五高等学校では、夏目漱石、嘉納治五郎、ラフカデイオ?ハーンなどが教鞭をとり、物理学者で随筆家の寺田寅彦、首相となった池田勇人、佐藤栄作などが学生として学びました。一歩キャンパスや建物に踏み入ると、彼らの息吹を感じることができる空間が広がっています。皆さんは、この緑豊かな素晴らしい空間で、思う存分、学びを深めることができます。
大学は高校までの教育と違い、教えられるのではなく自ら学ぶことが大切です。すなわち単に知識を得るだけでなく、目的意識を持って自ら学ぶ姿勢が重要です。熊本大学では、グローバル化する世界に対応した国際対話のリテラシーと文系?理系を問わずDX(デジタル?トランスフォーメーション)時代に対応できるデータサイエンスを身に付けた人材を育成します。
これに関連して、先日のWBCにおける日本の14年ぶりの優勝には、私も大変感動しましたが、WBCでは二刀流で有名な大谷選手が大活躍しました。皆さんもグローバルな視点を持ち、本学で国際対話のリテラシーとデータサイエンスの二刀流を磨いていただき、さらに、二つ、三つと専門性という刀を携え、世界に立ち向かえる人材を目指していただきたいと思います。
大学は、共に学ぶ友人やサークル活動を通しての先輩、後輩達との出逢い、共通の目標に向かって力を合わせて成し遂げる過程の中で人間形成を行い、社会性を身に付ける場でもあります。私は51年前の1972年に、皆さんと同じように、この熊本大学に入学しました。大学時代の友人との出逢いやクラブ活動を通して人として成長できたと実感しています。その仲間とは、51年経った今でも交流があり、人生の様々な重要な局面において、頼もしい存在になっています。
博狗体育官方感染症も改善の兆しがみえてきました。デジタル化でオンラインコミュニケーションが普及してきましたが、今年からは感染予防に努めながら、本格的にface to faceコミュニケーションを心がけていただきたいと思います。直接顔を見合わせて議論し合うことはすべてに勝るコミュニケーションだと思います。これは私の今までの経験から得た信念です。
熊本大学は、皆さんが学生生活を送られる今年から大きく変わります。今、熊本県は、国家的プロジェクトである半導体産業の拠点形成により全国から注目されており、本学へも100年に一度と言っても過言ではない変革の波が押し寄せて来ます。この4月には、「半導体?デジタル研究教育機構」を設置し、半導体分野及びその関連分野に関する先端研究並びに高度人材の育成等を推進していきます。
世界中で、昨年末にアメリカの企業が公開した、対話型AIを活用したインターネット検索サービス「Chat GPT(チャットジーピーティー)」が、大きな話題となっています。Chat GPTの登場により、今後、社会は劇的な速度で変革が進んでいくものと言われています。
この大変革期には、大胆な発想を呼び起こす叡智と自由な発想?創造とそれを具現化する情熱が必要です。まさに、熊本大学が掲げているコミュニケーションワード「創造する森 挑戦する炎」の実行の時です。その時期を体感できる皆さんは、幸運であると思います。大学は、皆さんの夢の実現のために研鑽する場ですが、同時に、社会の未来をより良くするために考え、行動する場でもあります。
教職員が一丸となって皆さんの成長と活躍を応援しますので、私も育った伝統ある熊本大学で有意義な大学生活を送られることを期待しています。
本日は、熊本大学へのご入学、誠におめでとうございます。
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令和5年4月4日
熊本大学長 小川久雄